会長所信

会長所信

2024年6月12日
全国地方銀行協会
会長 秋野 哲也

全国地方銀行協会 秋野 哲也

国内経済はコロナ禍が収束し、社会経済活動の正常化が進む中で、好調な企業業績等を背景に、2024年3月には日経平均株価がバブル期の最高値を約34年ぶりに更新しました。
 また、安定的な物価上昇や賃金引上げの動きなどを受け、8年に及んだ日本銀行のマイナス金利政策が解除されるなど、わが国経済は今まさに大きな転換点にあります。
 一方、構造的な人口減少・少子高齢化や時間外労働規制に伴う人手不足への対応、地政学的な緊張の高まり等を起因とする資源価格高騰や円安進行への対応など、地域の中小企業等が向き合うべき課題も多い状況です。
 こうした中で我々地方銀行は、資金繰り支援に留まらない中小企業等への支援に、先延ばしすることなく、取り組むことが求められています。
 また、「人生100年時代」を迎える中、顧客本位の業務運営を前提とした安定的な資産形成支援の重要性も高まっています。
 全国地方銀行協会は、「地方銀行の健全な発展を通じて金融経済の伸長に寄与し、もって公共の利益を推進する」という目的のもと、会員銀行の先にある地域のお客さまの課題解決に貢献していくとともに、会員銀行の健全な成長を支援し、協会自らも事業の高度化・効率化に取り組んでまいります。

1.会員銀行を通じた地域経済への貢献
 金融仲介機能の発揮等を通じた中小企業等への支援、顧客本位の業務運営を通じた資産形成支援等を通じて、当協会会員62行の先にいるお客さま、ひいては地域経済の発展に貢献してまいります。
 まず、法人のお客さまには、資金繰り支援に加え、本業支援・事業承継支援・事業再生支援等を提供するとともに、スタートアップ支援や気候変動対応支援にも取り組んでまいります。また、地方自治体を含めたお客さまのデジタル化支援も重要と認識しており、特に手形・小切手の全面的な電子化に向けては、そのメリットを丁寧に説明することで早期の実現を図ってまいります。
 個人のお客さまにおかれては、本年1月に新NISAが開始されたこともあり、将来に向けた安定的な資産形成ニーズが高まっているものと認識しています。我々地方銀行は、お客さまの大切な資産の運用を提案する立場として、金融商品の販売管理態勢の更なる充実に努めるとともに、お客さまの身近な存在として金融経済教育の提供にも注力してまいります。
 加えて、お客さまがより安心・安全に金融取引を行えるよう、マネロン対策や特殊詐欺対策、サイバーセキュリティ対策等も一層強化してまいります。

2.会員銀行の健全な成長支援
 お客さまや地域経済への貢献に向けては、我々地方銀行自身も健全に成長し、企業価値の向上やリスク管理体制の強化を図っていく必要があります。
 人的資本経営や気候変動・生物多様性といった社会的要請や各種金融規制への対応は、全国62行の地方銀行が集まる当協会の強みを生かし、知見の共有やディスカッション等を通じて全体の底上げを図ってまいります。
 また、会員銀行が新たなビジネスにチャレンジしやすい環境の整備に向けた規制改革要望を継続するほか、政府系金融機関等との適切な連携・協調を図ってまいります。

3.協会事業の高度化・効率化
 最後に、会員銀行のお客さまの課題やニーズが多様化する中において、協会自らも変革し、事業の高度化・効率化を図っていく必要があります。
 今事務年度は、「協会運営の中期ビジョン」のアップデートを通じて協会機能の更なる強化を図るほか、生活基盤プラットフォーム構想の実現により、住所変更手続の効率化をはじめとした地域のお客さまの課題解決に取り組んでまいります。

全国地方銀行協会は、関係省庁や他業態との連携も図りながら、これら3つの取り組みを柱として調査・研究に取り組み、会員銀行の経営課題解決を支援するとともに、会員銀行の先にいる地域のお客さまに貢献できるよう、誠心誠意努力してまいります。

以 上